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起業時に必要な「発起人」とは?「発起人」の役割と「発起人」を選ぶ際の注意点

man
「発起人って、どんな役割の人を意味するのですか?」

このような質問も少なくありません。発起人というのは会社設立時にしかほとんど出てこない役割ですので、はじめて起業をする人なら「はじめて聞いた。」というのが当然なのです。今回は、会社設立で覚えておく必要がある「発起人」について解説します。

「発起人」とは?

「発起人」とは

資本金を出資して、会社設立の手続きを行う役割の人のこと

を言います。

  1. 「お金を出す」
  2. 「会社を作る」

2つの機能を持つのが「発起人」です。

株式会社を設立する際には

  1. 「お金を出して、会社を作る人」
  2. 「会社を運営する人」

の両者が必要ですが

会社法では

  1. 「お金を出して、会社を作る人」 → 発起人
  2. 「会社を運営する人」 → 役員

となるのです。

役員とは

会社法では「取締役」「執行役」「会計参与」「監査役」「理事」「監事及び清算人」などの会社を運営する責任者のことを「役員」言います。

「発起人」 = 会社設立時の「株主」

発起人の役割の一つに「お金を出す(出資する)」というものがあります。

出資すれば、その分の株式を保有することになるので「発起人」は必然的に「株主」になるのです。

会社設立が無事完了すれば、今度は「株主」として、株主総会で議決権を行使し、会社の重要事項をコントロールしていく役割が発生するのです。

man
私の場合、「発起人」も「役員」も自分になるのですが、なんでわざわざ「発起人」と「役員」は分けられているのですか?
teacher
役割が違うため、同じ人にならない可能性があるからです。

1人で起業するのであれば

という形になるので、すべて同じ「自分」が「発起人」「株主」「役員」を担当します。

起業時にはこのパターンを取る方が多いかもしれません。

友人Bと自分Aが2人で起業するのであれば

と大分パターンが複雑になってきます。

発起人の考えうるパターン
株主の考えうるパターン
役員の考えうるパターン

つまり、

「発起人」 = 「株主」
「発起人」 ≠ 「役員」

となるのです。

「発起人」として出資をするけど、「株主」にはなっても、会社運営はしたくないので「役員」にはならない。

という選択肢があるということです。

teacher
「発起人」すべてが会社運営に携わる「役員」になることが義務付けられてしまうと、出資だけしたい方が出資をすることを敬遠してしまうので、お金を出す「発起人」と会社を運営する「役員」は別物として考えられているのです。

「発起設立」と「募集設立」

会社を設立する方法には主に2つの方法があります。

  1. 発起設立
  2. 募集設立

です。

発起設立とは

会社設立時に発行する株式のすべてを発起人が引き受ける形の会社設立方法のこと

を言います。

募集設立とは

会社設立時に発行する株式の一部を発起人が引き受け、他に株主となる人を募集する形の会社設立方法のこと

を言います。

会社設立時に「発起人」以外の株主を集めてしまうのが募集設立です。多額の資本金が必要な会社を設立する際に「発起人」だけでは目標とする資本金額が用意できない、という場合に他に出資してくれる方を募集して、資本金の不足分を出資してもらうのです。

ただし、この募集設立は、募集する出資者にとって拠出した資金の保全措置が必要となるため、複雑な手続きが必要になります。

  1. 「発起人」が「資本金いくらの会社を作りたいのか?」「自分達がいくら用意できるのか?」を定款に記載し、認証を受ける
  2. 銀行に認証済みの定款を提示し、資本金の払込機関になってもらう申込をする
  3. 創立総会を開催して、他の出資見込者から出資への許諾を得る
  4. 銀行に対して他の出資者が払込手続を行う
  5. 目標資本金額になったら、銀行が資本金の払込保管証明書を発行する
  6. 会社設立

ですから、かなりの期間と労力がかかってしまう方法なのです。

teacher
そのため、ほとんどの方は「発起設立」で会社を設立するのです。「募集設立」は、特別な事情がなければ、ほとんど使われないと考えましょう。

「発起人」の条件

「発起人」には制限がありません。

そのため、誰でも「発起人」になることができます。

ということになります。

未成年者が「発起人」になる場合には、法定代理人の同意が前提になります。「発起人」になるときには、法定代理人の同意書、印鑑証明書、戸籍謄本などの書類が別途必要になります。ただし、15歳未満は印鑑登録ができないため、たとえ保護者の同意が得られたとしても発起人にはなれません。

「発起人」は1人でもOK

「発起人」は何人いてもいいのです。

極端に言えば

資本金1000万円の会社で、発起人1000人から1万円ずつ出資してもらうことも可能です。

ただし、これでは、会社設立後は1000人の株主ができてしまうので、当然設立直後の会社にとっては、株主総会を行うのも一苦労になってしまいます。

一番シンプルなのは

の1人起業スタイルです。

この形であれば、自分だけの意思で会社経営ができます。

teacher
「発起人」は何人いてもいいのですが、1名、2名、多くても3名ぐらいに留めておく方が会社設立はスムーズに進みます。

「発起人」のやるべきこと

1.会社設立に必要な会社の重要事項を決定する

例えば

定款の作成も、「発起人」の役割ですので、定款作成に必要な会社の事項はすべて決定しなければならないのです。

2.定款の作成・認証をする

3.会社設立手続きを行う

4.資本金の出資を行う

5.その他の会社設立に必要な準備を行う

例えば

発起人の責任

発起人は「会社設立」に対して責任を負います。

などがあります。

複数名の「発起人」で起業する注意点

前述したように「発起人」は自分一人だと、すごくスムーズに起業ができます。

起業をしようと思っている方の中にも、自分だけでやりたいけれども、仕方なく、別の「発起人」を選ぶ形での起業を検討するケースがあります。

例えば

man
「自分の用意できる資金額では、起業したい会社の必要資本金額に届かない。」
「自分のスキルだけでは、起業したい会社のビジネスモデルを実現できない。」
「自分の人脈だけでは、起業したい会社のビジネスモデルを実現できない。」
「友人から共同で起業しようと言われていて、断り切れない。」
・・・

というものが挙げられます。

この場合では、「発起人」を複数名にして、会社設立をしなければなりません。その時の注意点を解説します。

注意点その1.出資比率に注意する

会社は株主のものですから、会社の方針を決める議決権は、株式の出資割合によって決まってきます。

出資割合によって経営権が取られてしまうということです。

「発起人」=「株主」であることを忘れてはいけないのです。

普通決議

出席した株主の議決権の過半数(50%)を持って表決される

  • 役員の選任・解任・報酬決定
  • 配当金の決定
  • 決算報告の承認
特別決議

出席した株主の議決権の3分の2以上(67%)を持って表決される

  • 資本金の減少
  • 定款の変更
  • 事業の譲渡や譲受の決定
  • 解散

自分自らが会社の経営権を維持したいのであれば

少なくとも51%以上の株式
理想は67%以上の株式

を保有しなければなりません。

むやみに「発起人」を増やしてしまうと、ここをクリアできなくなってしまうのです。

注意点その2.意見が合わない人を「発起人」にしない!

100%同じ考え方という人はいませんので、多少の意見の相違はあるはずです。

しかし、「発起人」は会社のいろいろなことを決定しなければなりません。

ことあるごとに対立して、意見の調整が付かなければ、会社設立は一向に進まないのです。

teacher
意見の相違があっても、相手の意見を尊重してくれる方、建設的な解決方法を提案してくれる方、をおすすめします。

人数が増えれば増えるほど、意見のすり合わせは難しくなってしまうので

「発起人」は極力少ない人数にする

ことを心がける必要があります。

注意点その3.将来的に経営方針が対立する可能性も考える!

会社設立の段階では、意見の相違がなくても、今後「意見の相違」が発生する可能性は多分にあります。

その時のことも、はじめから意識しておく必要があります。

例えば

「お前のことは信用している方、お互い平等に50%:50%の持分比率にしよう。」

と決めてしまったら、普通決議でも過半数を取るには「全会一致」が必要となってしまいます。

2人の意見が割れたら、会社の重要事項の決定ができず、機能停止に陥ってしまうのです。

teacher

将来的に「意見の相違」が発生する可能性を考えれば、会社が機能不全にならないために

51%:49%と、多少であっても、差をつけておくことが重要になるのです。

注意点その4.会社設立まで時間がかかる

「発起人」が複数名になると・・・

という問題が発生するため

「発起人」の人数が増えれば増えるほど、会社設立までのスピードは遅くなる

ことに注意が必要です。

teacher
スピードを優先するのであれば、「発起人」は極力減らす必要があります。

起業経験者の私がすすめるのは「発起人1人で起業」

「どうしても、1人で起業するのは不安。」という方は少なくありません。

しかし、その理由で

という選択肢は、絶対におすすめできません。

なぜなら、会社経営では「妥協は良い結果を生まない。」からです。

man
「信頼関係ができている方とであれば、一緒に起業してもいいのでは?」

と思う方も多いのですが、そうではありません。

信頼関係ができている人と経営方針で意見の相違があったときに

ということになりがちです。

大企業のメーカーの商品開発であれば、別にこれで問題はないのですが

起業直後の中小企業の場合は

というデメリットが強調されてしまうのです。

起業直後の中小企業が複数の意見を採用することを取り入れて

結果になれば、大企業に勝てないのは火を見るよりも明らかです。

起業直後の中小企業の場合は

「下手に経営仲間がいて相談できること」よりも、「自分の思いだけ突っ走るワンマン型」の方が成功率が高いのです。

だとすれば

「発起人」は自分だけにして、会社設立をしてから、必要な時にしかるべきお金を払って手伝ってもらえれば良いのです。

man
「資本金が目標金額に足らないので、出資してくれる発起人が自分以外に必要な時はどうすれば良いでしょうか?」

融資による資金調達を検討しましょう。

融資であれば、返済しなければなりませんが、株は100%自分だけのものですので、経営方針にブレは発生しません。また、日本政策金融公庫の融資であれば、個人保証も外せるので経営者のリスクはかなり抑えられます。

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もしくは、経営に口を出してこない家族の出資は受け入れることも、問題ありません。

まとめ

「発起人」とは

「発起人」のやるべきこと

  1. 会社設立に必要な会社の重要事項を決定する
  2. 定款の作成・認証をする
  3. 会社設立手続きを行う
  4. 資本金の出資を行う
  5. その他の会社設立に必要な準備を行う

複数名の「発起人」で起業する注意点

  1. 注意点その1.出資比率に注意する
  2. 注意点その2.意見が合わない人を「発起人」にしない!
  3. 注意点その3.将来的に経営方針が対立する可能性も考える!
  4. 注意点その4.会社設立まで時間がかかる
teacher

「発起人」はお金を出す役割があるため、自分一人の資金では心もとないと思う方は、「発起人」を増やしてしまいがちなのですが、「発起人」は「株主」になるため、下手に「発起人」を増やしてしまうと、会社の経営権を失ってしまうリスクがあります。

起業経験者である私の意見としては、会社設立直後の中小企業の場合は、経営者が100%自分の意見を持って、スピーディーに意思決定できる環境が大企業に勝つために必要なポイントだと考えるため、「発起人」は自分一人のみで会社設立することをおすすめします。