とIT起業を考えている経営者の方も少なくないと思います。筆者はIT起業をして早4年、社員数は超零細企業ですが、年収は2億を超えました。実体験を踏まえて「IT起業で失敗しないための心得」を自分のメモの意味も込めて解説します。
目次
心得その1.具体的な3年後の目標を設定する
IT起業と言っても、孫正義さんのような形も「IT起業」でしょうし、細々とWEBの制作会社をしていても「IT起業」です。
どちらが正しいとうことではなく「あなたが何を選ぶのか?」だけの違いでしかありません。
志の中で
- 世界に通用する「google」や「facebook」を作ろう!
と考えるのか
- ITは初期投資が少なくて済むから、ITで起業しよう!
と考えるのか
- 元々、WEBの制作や開発の受託をしていたのでそのまま独立しよう!
と考えるのか
で大きくやるべきことは変わってきます。
IT起業は、どれも選べてしまうからこそ
が重要になるのです。
筆者がおすすめするのは
- 10年後の目標(長期計画)
- 3年後の目標(中期計画)
- 半年後の目標(短期計画)
を決めることです。
普通の上場企業の場合、中期計画というのは5年計画のものが多いのですが、WEBはスピードが早いので3年後の目標設定でも十分に到達可能です。
この中で最も重要なのは「3年後の目標(中期計画)」です。
私の場合は
- 10年後の目標(長期計画) 5社のメディア事業会社を立ち上げ・買収、年商10億円
- 3年後の目標(中期計画) 年間の営業利益1億円/社員数3名
- 半年後の目標(短期計画) 月50万円の利益
と設定しました。
私の会社はメディア事業の会社ですから、「どんなメディアをどんな規模に」というのも同時に決めました。
現実は
- 4年目:営業利益2.5億円
ですから、60点~70点ぐらいのペースでは進んでいると考えています。
IT起業経験中の筆者からのアドバイス
目標は具体的な数字で設定する
VISONやスローガン、ミッションは、言葉として定義するものです。
例:コカ・コーラ社
「コカ・コーラ社はみずからが接するすべての人に利益と活力を提供するために存在する」
しかし、目標は具体的な数字でないと意味を成しません。
□□に入る具体的な数字は
- 売上
- 利益
- 利用者数
- 市場シェア
など、事業形態によって異なりますが、具体的な数字で目標を作る必要があります。
高い目標の方が良い
目標高いとやる気がなくなってしまうという方もいるかと思いますが・・・そもそも、そんな方は起業に向いていません。
目標が高ければ、達成率が50%でも、十分な利益を上げることになります。
サラリーマン時代に、年収600万円の筆者が、いきなり3年で年収(会社の営業利益)1億円の目標を立てるのは無謀だと思いますか?
当時は、私も「ちょっと無謀だったかな?」と思いましたが、達成できました。
心得その2.アクションプランは目標から逆算して考える
目標を決定すれば、おのずとアクションプランは決まってきます。
私の場合は
半年後の目標(短期計画):月50万円の利益
でしたから、メディア事業ですが・・・悠長な選択肢はありませんでした。
即効性のある集客方法「リスティング広告」などを積極的に利用し、マネタイズできる方法を探りました。
しかし、
3年後の目標(中期計画) 年間の営業利益1億円/社員数3名
を考えた場合には、「リスティング広告」を中心に集客して、広告出稿を募っているだけでは到底到達しないこともわかりきっていたのです。
独自性の高いメディアを立ち上げて、PRや話題性で多くの利用者を増やして、広告出稿やユーザー課金で収益を上げるモデルも同時に動いていかなければ、達成しない目標だったのです。
結局この2つの時間軸の目標をはじめに設定していたことで
起業当初
- 半年後の目標のための行動:90%
- 3年後の目標のための行動:10%
3か月後
- 半年後の目標のための行動:80%
- 3年後の目標のための行動:20%
半年後
- 3年後の目標のための行動:90%
- 10年後の目標のための行動:10%
1年後
- 3年後の目標のための行動:70%
- 10年後の目標のための行動:30%
と徐々に目標達成のための行動のウェイトをずらしながら、常に目標を意識してアクションを取っていたのです。
「3年後:営業利益1億円」を達成するためには
- 月売上:500万円のメディアを3個作る必要がある
2年目までに
- 月売上:200万円のメディアを3個作る必要がある
1年目までに
- 月売上:50万円のメディアを3個作る必要がある
細かく要素を因数分解していけば、デイリーの目標まで決まってきます。
少なくとも、週間の目標までは設定して、アクションプランに落とし込むことが重要です。
IT起業経験中の筆者からのアドバイス
計画は常に調整をかけていくもの
「計画は道しるべ」であって、必ず達成しなければならないものではありません。
環境の変化によっても、計画を変える必要に迫られることもあります。
筆者の場合は、毎週計画を1週間の行動と結果を基に微調整しています。
逆に言えば、計画を作るときに100点満点の計画を作る必要もないのです。そもそも、100点満点の事業計画なんて、絶対に作れません。
心得その3.初期投資の少ないIT起業だからこそ、自己資本でやろう!
起業プランが明確で、上場までの絵を描いている起業家は別です。自己資本でやる必要はなく、VCやファンド、エンジェルから資金調達すれば良いと思います。
しかし、
という起業を検討している方には「自己資本」での起業をおすすめします。
理由は
からです。
と思われるかもしれませんが・・・
筆者は、M&Aのサポートをしていた時期があったので、自分で株を十分に持っていない多くの経営者の末路を見てきました。
ファンドやVC、株主は残酷です。
「もう、あの社長ダメだな、交代させよう。」
「金ないなら、取りあえず自宅売らせて、そのうえで会社は売却するか?」
・・・
なんて言葉が飛び交うのです。
その時、「私は絶対、自己資本で起業しよう。」と思ったのを今でも覚えています。
自分で51%を超える株を有していなければ「雇われ社長」です。
IT起業であれば
- お店も不要
- 事務所も不要
- 社員も不要
ではじめることができます。
筆者の場合も、貯金500万円で資本金100万円でスタートしていますから、100万円ぐらいなら、1年がんばって働ければ、学生でも貯められるレベルです。筆者は、借金もしていません。
十分に自己資本で起業できるのです。
また、資金調達した他人のお金では本気度が薄れてしまうデメリットもあります。
- 自分が稼いだお金なら、なんとかなくさないように必死になります。
- 他人のお金なら、プレッシャーはあるものの、自分のお金よりは必死になれないものです。
IT起業経験中の筆者からのアドバイス
100万円の貯金もない方へ
起業するのは少なくとも「100万円+売上がなくても1年は生活できる資金」が貯まるまで待ちましょう。
その間に起業時に必要なスキルが身につく可能性の高い会社で働ければよいのです。
極端な話、「営業のスキルが必要」と考えるのであれば、IT起業を検討しているシステムエンジニアだとしても、思い切って営業の会社に1年と時間を決めて入ってしまうのも、賢い方法です。
心得その4.日次管理の重要性
日次管理とは
1日の売上、利益をチェックすることです。
なぜ、日次管理が重要なのか?
- 毎日数字を見ていると、問題点に気づく
- 毎日数字を見ていると、改善策、改善アイデアを思いつく
- 毎日数字を見ていると、危機感が醸成されてモチベーションが増す
- 毎日数字を見ていると、他の要素との関連性がわかってくる
からです。
毎日数字を見ていると、
「このアクションをするとユーザーはこう反応するんだ。」
「この曜日は著しく売上が悪くなるな。」
「急激に売上げが上がったメディアがあるけど、TVに取り上げられたんだろうか?」
・・・
という発見があります。
ITの良いところは、数字で分析ができるところです。
不動産会社の社長の友人に話したところ
と笑われますが、ITだからこそ、ウェブサイトの分析も秒単位で測定できるのです。
心得その5.受託型のビジネスモデルはIT起業には不向き!
これは100%断言できることではありませんが・・・
- WEB制作を受注するビジネスモデル
- システム開発を受注するビジネスモデル
の場合は、
1人の社員の売上の上限が決まってきてしまいます。
どんなに優秀なWEBデザイナーでも、システムエンジニアでも、月200万円の粗利をだすのは簡単なことではありません。
せっかく、IT起業をするのであれば
- アプリ
- ASP
- クラウドサービス
- デジタルマーケティング
- メディア
など、社員数と比例しない売上が見込める事業を検討するべきです。
- 受託ビジネス
y = ax
の1次関数の売上の伸びしか描けないのです。
- アプリ
- ASP
- クラウドサービス
- デジタルマーケティング
- メディア
y = ax2
の2次関数の売上の伸びになるのです。
社員数数名でも、数億円の利益を出すには後者のビジネスモデルを検討する必要があります。
IT起業経験中の筆者からのアドバイス
受託型のビジネスモデルで起業してから、シフトするのもあり
はじめの1年は企業の基礎体力を作るために
- 受託型のビジネスモデル
を選択して、
徐々に
- 2次関数型のビジネスモデル
のウェイトを増やしていくという選択肢もありです。
心得その6.苦手なことこそ積極的にやる
IT起業を検討している方の中には
- システムエンジニアだったから、営業が苦手
- WEBデザイナーだったから、経理が苦手
- 広告営業だったから、システムが苦手
・・・
と、今までの職歴に合わせて「苦手」なものがあるかと思います。
筆者は、前職ではWEBマーケティングのコンサルタントでした。
得意だったこと
- BtoBの営業、コンサルティング
- プレゼン、顧客提案
苦手だったこと/やったことがなかったこと
- WEBサイトの制作
- システム開発
- 経理・会計作業
- 契約書の作成
です。
WEBマーケティングをしていたので、WEBサイト制作やシステム開発の外注を使うノウハウは持っていました。
しかし、起業直後から、ガンガン外注に依頼するお金はありません。
結局、自分でやるしかないのです。
今となっては
WEBの制作も、
PHPの開発も、
弥生会計への入力も、
契約書の作成も、
全部余裕でできます。
苦手なものにこそ、力を入れて、可能性を広げる必要があるのです。
IT起業経験中の筆者からのアドバイス
苦手なものこそ、自分でやってみると意外な発見がある!
自分で、入門書を読みながら試行錯誤している段階で
- こうしたら、売上伸びるんじゃないのか?
- こうしたら、競合に負けないサービスができるんじゃないのか?
・・・
という現在のビジネスの根幹をなすようなアイデアがどんどん出てくるのです。
心得その7.環境に適用したものが生き残る
ITという業界は、他の業界と比較しても
イノベーションが早く、かなりのスピードで変化をしていく業界です。
あれっ
こないだまで「グリー」が、のさばっていたと思ったら・・・
アプリは自社開発の時代になり、、ほとんどいなくなった。
あれっ
グノシーのCM出稿量ってかなり減っていないか?
あれっ
RSSってどこに行ったの?使っている人いるの?
あれっ
ソーシャルニュースメディアは続々と終了しているけど・・・
まぁ、びっくりする出来事が多い業界です。
筆者の体感では
年に1回、2回大きなビックウェーブが来る感じです。
ちなみに筆者はWEBメディア事業ですので、昨年末にDeNAの医療メディアの問題で、googleなどもアルゴリズムを大きく変更させてしまったため
です。
と言いたくなりますが、もう4年もやっているので、そのぐらいのビックウェーブが来ても、
ぐらいのテンションで耐えられます。
ダーウィンの進化論のように
環境に適用したものが生き残る
のです。
そのためには
- 情報の収集、アンテナを常に貼っておくこと
- いざという時のプランB
を平時の時から持っておく必要があります。
心得その8.「敵に勝つ」ことだけに集中する
IT起業の成功で重要なのは
- 明確な敵(競合)の設定
- 敵の行動をストーカーする(定期的にチェックする)
- 敵に勝つためにサービスを設計する
の3点です。
ITの良い点は、「敵」の情報を入手しやすいことになります。
弊社の場合は、メディア事業ですので
- 競合メディアの情報を週1回は欠かさずチェック
- 競合メディアのコンテンツやサービスを洗い出し
- 競合メディアのコンテンツやサービスに勝つ方法を検討
- 敵にスピードで勝つ
- 敵にクオリティで勝つ
- 敵にボリュームで勝つ
- 敵がやっていないことをする
・・・
競合メディアの情報はダダ漏れのようなものですから
- サイトを見れば、新しいサービスや情報がわかる
- 媒体資料を見れば、広告メニューの価格がわかる
- IR資料を見れば、ユーザー数や売上の推移、利益率が分かる
- 会社のニュースリリースを見れば、新しいサービスや賞品情報が分かる
のでIT業界は「敵に勝ちやすい」業界とも言えるのです。
心得その9.誰にもノウハウをしゃべるな!
前述した通りで、IT業界は「敵に勝ちやすい」業界です。
ITは参入障壁も低いので、誰でもやろうと思えばできてしまうのです。
だとすれば、「ノウハウは少しも漏らさない」心がけが必要です。
- 従業員にも、話していいノウハウは限定する
- 外注先には、絶対に話さない
- 経営者の友人には、絶対に話さない
- クライアントにも、話さない
- 奥さんや彼女にも、話さない
- 友人にも、話さない
・・・
ノウハウを漏らしていいことなんて、ひとっつもないのです。
多少でも、話題になれば、色々なメディアから取材を受けたり、SNSで発信するだけで色々な方からフォローされたりしますが・・・
ノウハウの断片を話しても良いのは、会社を上場させて、引退間際ぐらいでいいでしょう。
心得その10.利益管理をする
IT起業の場合は、どんなビジネスモデルにするか?わかりませんが・・・
- 利益率が決まっている画一商品の販売
であれば、「売上」管理をしても、利益率は一定なので「利益」管理しているのと変わりません。
しかし、IT業界の場合は
- 複数の商品
- 複数のサービス
- 複数のアプリ
- 複数のメディア
を扱うことが多いかと思います。
なぜなら、ITには仕入れコストがないので、商品、サービス、アプリ、メディアを新しく作ることがさほど難しいことではないからです。業界の流れも速いので、環境に適用するためには、商品、サービス、アプリ、メディアをどんどん投入していくことになります。
商品ごと、サービスごとに「利益率」は変わってきてしまうので、もはや「売上」は経営指標の一つというだけであって、存在している意味はほとんどないのです。
「広告宣伝費を除いた粗利」
をベースに
- 商品ごと
- サービスごと
- アプリごと
- メディアごと
の利益を計算し、利益目標を立てて、日次の利益を管理する体制を取るべきです。
広告代理店から1億円の広告出稿を回してもらっても、代理店手数料で抜けるのが50万円だけだったら、お話にならないのです。売上1億、コスト9950万円なんて、PLを作っても、意味がないのです。
心得その11.資産運用でメンタルを安定させる
前述した通りで、IT業界はスピードが早く
- いつ、自分の会社が行っているサービスや商品が売れなくなるのか?
- いつ、自分の会社の成功法則が通用しなくなるのか?
まったく読めません。
それが明日かも知れないのです。
そうなったときに「生活できなくなる」としたら、メンタルが崩壊してしまい、間違った経営判断をしてしまいかねないのです。
IT会社の収入は、不動産投資に回して
もし、IT業界で売上0円、収入0円になっても
月50万円ぐらいは賃貸収入が入ってくるようにしています。
借金をして不動産投資をしてしまえば、それもメンタルの負荷になってしまうので、基本は現金での不動産購入です。
筆者の場合は
- 産業用太陽光発電:2000万円 → 利回り10%
- 中古戸建て不動産:1000万円 × 4戸 → 利回り10%
ぐらいです。
6000万円の10%の600万円が不動産収入です。
こうなってしまえば、ITの会社がこけても、生活の不安はありませんし、復活する準備もできます。
不動産の借入もないので、いざとなれば不動産を担保にした資金調達も可能です。
これだけの「安心」があるからこそ、IT業界のビックウェーブが来ても、冷静に対処できるのです。
IT起業経験中の筆者からのアドバイス
おすすめは中古戸建て賃貸
中古の戸建て賃貸は、500万円ぐらいでの現金購入で、利回り15%も簡単にあります。
中古なので融資がおりないので、現金で買える人しか対象にならないので、投資家の競合が少ないのです。投資資金もそれほど大きくありませんし、戸建に住んでくれる人は、5年、10年と住んでくれるので、入居者募集等の手間も不要です。
まとめ
筆者の経験で判断する「IT起業で失敗しないための心得」には
- 心得その1.具体的な3年後の目標を設定する
- 心得その2.アクションプランは目標から逆算して考える
- 心得その3.初期投資の少ないIT起業だからこそ、自己資本でやろう!
- 心得その4.日次管理の重要性
- 心得その5.受託型のビジネスモデルはIT起業には不向き!
- 心得その6.苦手なことこそ積極的にやる
- 心得その7.環境に適用したものが生き残る
- 心得その8.「敵に勝つ」ことだけに集中する
- 心得その9.誰にもノウハウをしゃべるな!
- 心得その10.利益管理をする
- 心得その11.資産運用でメンタルを安定させる
というものがあります。
当然、これがすべてだとは思っていませんが、今現在も、この心得に即して経営をしているのは事実です。
IT起業したい方の参考になれば幸いです。
「ITの方が投資コストが少ないから良い。」
・・・