と起業する方は、ぼんやりと会社名について考えていることかもしれません。今回は、起業経験者が教える後悔しない会社名の決め方について解説します。
目次
会社名を決めて「後からこうしておけば良かったなぁ~。」と後悔したシチュレーション
後悔その1.営業時に名刺を渡して、話が弾む会社名にしておけば良かった。
起業直後というのは、当然その会社のことは誰も知りません。
- 取引先
- クライアント
と打ち合わせ・営業をするときに名刺交換して、まず話題になるのは
「〇〇という会社名なんですね。由来はなんですか。」
「会社はどのくらい経営されているんですか?」
というぐらいしかないのです。
相手にとってみれば
- 知らない会社
- 営業される側なので事前に下調べをしているわけでもない
状況で
いきなり本題の打ち合わせに入るわけでもなく、アイスブレイクとして話題を振ってくれるときは
- 会社の住所
- 会社名
- 事業歴
ぐらいしかないのです。
この時に
と
へ落とし込めれば、非常にスムーズに営業に移ることができるなと後悔したわけです。
後悔その2.検索して1番上に出てくる会社名にしておけば良かった。
これはすごく重要なポイントですが・・・
- 名刺交換
- プレスリリース
- 広告宣伝
・・・
など、積極的に営業活動したときに
多くの人は「会社名で検索する」という作業をします。
と、気になって調べた経験がある方もいるかと思います。
このときにありきたりな名前すぎると・・・
同名の他の会社がgoogleの検索結果で1位に来てしまって、自社のサイトにたどり着いてもらえないことがあります。
googleの検索エンジンの仕組み上
- 古いサイト、古い会社 → 上位に来る
- 新しいサイト、新しい会社 → 評価されるまで半年、1年以上かかる
形なのです。
今でこそ「アップル」と検索すれば
「Apple Inc.」のサイトが1位に来ますが、これを起業直後の会社がやってしまったら・・・1ページ目にも会社のサイトが現れないことになってしまいます。
登記では、同一住所の同一商号でなければ、他社と同じ会社名をも設定できますが
後悔その3.「ださい会社名」は採用に影響する!
経営者自身だけの問題であれば
- ださいか?
- かっこいいか?
というのは主観の問題ですので、どちらを選んでも問題ありません。
しかし、例えば
と名前を付ける経営者がいたとします。
ご自身だけの問題であれば、これで良いのですが・・・
「社員を採用する」となったときに
同じ規模の中小企業であっても
- 「advertise consulting」なのか?
- 「集客アップ株式会社」なのか?
では、採用される社員側のイメージは異なります。
とは言いにくいし、恥ずかしいのです。
「ださい会社名」は採用効率が落ちてしまいます。
後悔その4.短い会社名にしておければ良かった。
- アップル
- グーグル
- ソフトバンク
- アマゾン
- サントリー
- トヨタ
- ヤマハ
- リクルート
- 楽天
・・・
と、世界的な大企業は短い会社名が少なくありません。
例えば、前述した「株式会社advertise consulting」にしてしまうと
- 誰も覚えられません。
- 電話でも、「はい。株式会社advertise consultingの〇〇です。」と長いのです。
- 契約書にサインするのも、やたら長いと面倒くさいのです。
長い会社名でも、商品やサービスで世界的な知名度を獲得すれば「略称」で呼んでもらえるかもしれませんが、そうなるまでのデメリットを考えると、できるだけ短い会社名が望ましいのです。
起業経験者だからわかる「会社の決め方」で「どうでも良い」と感じるポイント
どうでも良いと思うポイントその1.ドメインを取得できるか?
会社名を決める前にドメインが取れるかどうか?を気にする方もいますが・・・
ドメインは別に
- 「略称」にしても
- 「-」をつけても
- 「.co.jp」「.jp」「.com」でも
構わないので
どうでも良いと思うポイントその2.サービスや商品の内容を体現する会社名
「商品やサービス」というのは「経営理念」に基づいて決定されているのですから、本来は「経営理念」に関連した会社名であれば、「商品やサービスのコンセプト」も体現しているはずなのです。
大企業であっても
Apple
→ リンゴの会社ではありません。
ソフトバンク
→ ソフトだけではなくて、ハード(光回線や携帯端末など)も販売しています。
ライオン株式会社
→ ライオンに関連しているビジネスではありません。
というように
「商品やサービス」と「会社名」がつながらない企業も多いのです。
GMOインターネット株式会社 → インターネットの会社
株式会社ぐるなび → 「ぐるめ」の「なび」
と、「商品やサービス」と「会社名」がつながるパターンの方が少ないのです。
どうでも良いと思うポイントその3.「占い」や「画数」で決める
会社経営には「運」も必要なのは間違えありません。
しかし、社名に「占い」「画数」を持ち込んでしまうと・・・
と、悪い意味での「自分への言い逃れ」に使えてしまいます。
会社経営を成功させるのは「自分自身」です。
と、少なくとも私は思いました。
どうでも良いと思うポイントその4.奇抜な名前を採用する
世界最長の社名(ギネス申請)
株式会社あなたの幸せが私の幸せ世の為人の為人類幸福繋がり創造即ち我らの使命なり今まさに変革の時ここに熱き魂と愛と情鉄の勇気と利他の精神を持つ者が結集せり日々感謝喜び笑顔繋がりを確かな一歩とし地球の永続を約束する公益の志溢れる我らの足跡に歴史の花が咲くいざゆかん浪漫輝く航海へ
マイナスイメージの社名
株式会社闇
など「奇抜な名前にすれば注目される」というのは間違えではありません。
しかし、一時注目されたとしても、実際に顧客が評価するのは「商品やサービスの価値」です。
- 「商品やサービスの価値」が十分であれば、勝手に会社名も知名度が上がります。
- 会社名の知名度が抜群でも、「商品やサービスの価値」が不十分であれば、マイナスイメージだけが拡散してしまいます。
まとめ
起業経験者が教える後悔しない「会社名の決め方」は
- 「経営理念」を体現する、表現する会社名にすること
- 検索結果で1位に表示される「新しい言葉」にすること
- 社員が恥ずかしくないレベルで、ダサい会社名は避けること
- カタカナ3文字~5文字など短い会社名
どうでも良い「会社名の決め方」は
- ドメインが取れるかどうか?
- 「商品やサービス」を体現する、表現する会社名にすること
- 「占い」「画数」
- 奇抜な名前
だと考えます。
ここまでは、実際に会社経営をしている中で「会社名をもう一度決められるならこうする」という考え方です。
それほど、別に会社名を決めるために最低限守らなければならないルールについても確認しておきましょう。
実務上の会社名を決めるルール
使用できる文字や符号
「文字」
- 漢字
- ひらがな
- カタカナ
- ローマ字(大文字・小文字)
- アラビア数字(0, 1, 2, 3, 4, 5……)
「符号」
- &(アンパサンド)
- ‘(アポストロフィ)
- ,(コンマ)
- -(ハイフン)
- .(ピリオド)
- ・(中点)
「株式会社」を前か後につける
株式会社の場合は、必ず「前」か「後」に「株式会社」を付ける必要があります。「合同会社」も必ず「前」か「後」に「合同会社」を付ける必要があります。
前株
- 株式会社サイバーエージェント
- 株式会社ぐるなび
- 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
後株
- シャープ株式会社
- ソフトバンク株式会社
- ライオン株式会社
合同会社
- Apple Japan合同会社
- 合同会社西友
- ユニバーサルミュージック合同会社
同一住所で同一の会社名(商号)はNG
同じ住所で、同じ会社名はダメです。
しかし、住所が違えば、同じ会社でも登記は可能になります。
- 東京都千代田区〇〇1-1-1 株式会社ジュウショ
- 東京都千代田区〇〇1-1-2 株式会社ジュウショ
は、違う会社でもOKなのです。
支社名、部署名は入れることができない
〇〇東京支店株式会社
〇〇営業部株式会社
は、会社名としてはNGです。
公序良俗良俗に反する社名はつけられない
- 財産秩序に反するもの
犯罪、賭博などの射幸性の高いもの。例:「犯罪株式会社」
- 倫理的秩序に反するもの
不法薬物や売春といった倫理に背くことを連想させるもの。例:「違法ドラッグ株式会社」
- 自由、人権を侵害するもの
人権の侵害、差別、知的財産権の侵害など、基本的な人権や権利を侵害するもの
業種によっては、会社名に必ず入れなければならないワードがある
「銀行」「信託」「保険」など、銀行、信託銀行、保険会社などは会社名にその業種を表す言葉を入れなければなりません。
実務上の会社名を決める前にやっておくべきチェック
さきほど
- 同一住所で同一の会社名(商号)は登記できない。
- 同一住所でなければ、同一の会社名(商号)は登記できる。
と言いましたが、
「登記」だけで見れば、この通りなのですが、実務上は
ということを理解しておく必要があります。
例えば
健康食品メーカーを立ち上げるときに「サントリー株式会社」という名称で起業しようとします。
登記上は、住所が違うので問題はありません。
しかし、「サントリー株式会社」は、誰もが知る飲料メーカーです。健康食品も取り扱っています。
当然のように、特許庁に「サントリー」関連のワードの商標登録をしています。
この状態で「サントリー株式会社」という新会社が健康食品を販売してしまうと・・・
多くの消費者が「あの大企業の健康食品だ。」と勘違いして購入してしまう可能性があります。
そうなれば、本当の「サントリー株式会社」から商標権の侵害で損害賠償請求を起こされてしまうのです。
結局
住所が違えば、他の会社と同じ名前であっても登記上は問題ないが、実務上は「損害賠償請求」「差し止め請求」などのリスクを避けるために
- 同業種で商標登録をされているワードは避ける
- 同地域で同じ会社名は避ける
方が無難なのです。
とくに有名な企業名の場合は、ほとんど商標登録されている可能性があるので、会社名には入れるべきではないのです。
商標調査
商号調査
法務局「オンライン登記情報検索サービス」
登記情報提供サービス
会社名は後から変えられるが、なかなか変えられない!
会社名というのは「定款を変更する」だけですので、後から変えることもできます。
しかし、実際には
- 今まで営業してきた「会社名の認知度」を捨てる必要がある
- ウェブサイトを変える必要がある
- 会社案内を変える必要がある
- 看板・サインを変える必要がある
- 制服を変える必要がある
- 営業資料を変える必要がある
- オフィスの内装を変える必要がある
- 契約書の再締結を要求してくる取引先が出てくる(法律上は不要)
・・・
と、なかなかコストがかかるものになってしまいます。
そのため、「会社名を変える」ことを実行するのは、大企業が多いのです。
- 経営方針の変更に伴い会社名を変える
- M&Aに従って会社名を変える
- あたったサービスに合わせて会社名を変える
・・・
ということに踏み切る大企業は多いのですが、起業間もない中小企業がやることではありません。
「appleとか、googleとか、かっこいい会社名がいいよなぁ。」
「奇抜な名前で目立ちたいな。」