起業を検討している方の中には、「補助金」や「助成金」について聞いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。今回は、起業時の資金調達でもらっておいて損はない「補助金・助成金」について解説します。
目次
「補助金・助成金」とは?
「補助金・助成金」とは
を言います。
これは
返済する必要のない事業資金
です。
と思う方も多いと思いますが・・・
です。
起業時の資金調達方法としては
- 日本政策金融公庫
- 銀行の制度融資(保証協会の保証付融資)
- 銀行プロパー融資
などがありますが、どれも「融資」ですので、利息を支払って返済をする義務があるのです。
- 補助金
- 助成金
はどちらも「返済不要」であり、起業した直後の会社でも、対象になるので「補助金・助成金」は検討する価値のある資金調達方法なのです。
例えば、国が「出生率を上げる」という政策を掲げたときに、この政策を推進するための方法はいろいろありますが、一つは「保育所を増やす」ことも、重要な政策となります。
ここで、補助金として予算をつければ、「保育所」で起業したいという方も増えますし、「保育所」を運営している方も資金的な余裕ができ、店舗数を増やしたり、従業員の給与を上げることに使えるかもしれません。
補助金を効果的に活用することで、政策を進めることができるのです。
これは、国単位でも、都道府県単位でも、同じことがあるため、国や地方公共団体は、政策と結びついて補助金・助成金を交付しているのです。
「補助金・助成金」は、毎年3,000を超える数が募集されます。
主な「補助金・助成金」には
- ものづくり系
- 産学連携
- 展示会出展
- 海外進出
- 地域産品の開発・販路拡大
- 農商工連携
- 商店街活性化
- 温暖化ガス排出抑制
- 高齢者雇用
- 障害者雇用
- 新卒採用促進
- 雇用のための能力開発
・・・
などがあります。
「補助金」と「助成金」って何が違うの?
- 補助金 → 経済産業省が提供する返済不要の資金のこと
- 助成金 → 厚生労働省が提供する返済不要の資金のこと
です。
大きな意味の違いはありませんが、提供する省庁によって名称が違うため、2つあるのです。
ただし、提供する省庁の方針の違いが、補助金と助成金の違いに大きくあらわれてきます。
項目 | 助成金 | 補助金 |
---|---|---|
提供している主な機関 | 厚生労働省 | 経済産業省 |
支援分野 | 雇用増加、雇用安定、能力開発 | 技術開発、商店街活性化、エコ |
難易度 | 簡単 条件を達成すればもらえる |
難しい 優秀な提案のみもらえる |
金額 | 10万円~100万円程度 | 100万円~1億円程度 |
募集機関 | 通年 | 年1回で1週間~4週間 |
専門家 | 社会保険労務士、行政書士、コンサルティング会社 | 中小企業診断士、コンサルティング会社 |
注目してほしいのは
- 補助金 → コンペで応募した企業の中から選ばれる ≒ 申込んでも通らない可能性が高い
- 助成金 → 条件をクリアすれば利用できる
という違いです。
「補助金」は、申請者の中から「政策を推進するために良いプランかどうか?」という視点で点数の多いものが採択される仕組みになっています。過去の倍率を見ても、数倍~数十倍になることもあり、難易度が高いのが特徴です。その分、数が多く、金額も高額なものもあるのです。
一方で「助成金」は、条件をクリアしていれば、必ずもらえるものですので、難易度が低い特徴があります。ただし、金額はそこまで高額なものはありません。
「補助金・助成金」は、どうやって探せばよいの?
「補助金・助成金」の探し方
J-Net21
ミラサポ
補助金総覧
日本電産企画が販売している「補助金総覧」という書籍が毎年8月ごろに発売されています。
各官公庁、地方公共団体のウェブサイト
例:経済産業省 公募情報
例:厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金
「補助金・助成金」を探すときの注意点
意外と早く募集期間は終わってしまう!
「補助金・助成金」の募集期間は、3週間~1か月程度です。定期的に新着情報をチェックしていないと、これはという「補助金・助成金」があっても、「募集は終了しました。」というメッセージが出てしまっているのです。
これを回避すためには、定期的な巡回が必要なのと、各官公庁、地方公共団体のウェブサイトに直接見に行く必要があります。ミラサポやJ-Net21は、横断して検索できる分、便利であることは間違えありませんが、一方で情報更新が遅いケースもあり、注意が必要です。
前年の募集実績から、今年の募集時期を予想をする
国や地方公共団体の政策は、毎年全部が全部変わってしまうものではありません。8割がたは同じ政策であり、内容が微調整されているぐらいで、目新しい新規の政策というのは2割も満たないのです。
ということは、前年募集された「補助金・助成金」も、同じように今年も募集される可能性が高く、時期もほとんど同じですので、過去の事例を見れば、今年度の募集時期を予想することができるのです。
「補助金・助成金」のお金をもらうまでの流れ
補助金の申込・採択・支払いまでの流れ
1.補助金公募
補助金の公募内容が国や地方公共団体のウェブサイトに掲載されます。
2.補助金の内容を確認する
補助金の内容を確認し、他の補助金と比較したうえで、最終的に募集する補助金を決定します。
3.補助金に申請する
補助金の申請書類を準備し、申請します。
4.書類審査
補助金の申請書類の審査が行われます。書類審査でかなりの数がふるいにかけられます。
5.面接審査
書類審査を通過すると、面接による審査が行われます。
6.採択決定
面接審査が通れば、採択決定です。
7.交付申請書の提出
交付のための申請書を準備し、申請します。
8.交付決定
交付決定通知書が郵送されてきます。
9.補助事業開始
補助事業の開始になります。注意が必要なのは、交付申請書で提出した経費明細書通りに経費を利用しなければならないということです。
10.定期報告・巡回指導
補助事業の内容によっては、。定期報告や巡回指導が必要になります。
11.実績報告書の提出
補助事業の期間が終了したら、実績報告書を提出します。
12.確定検査の実施
報告書通りに事業が行われたのか検査が行われます。
13.支給額の決定
検査結果に基づいて、最終的な補助金の支給額が確定します。
14.清算払い請求
確定した支給額の支払い請求をします。
15.支払完了
助成金の申込・採択・支払いまでの流れ
1.助成金を選ぶ
厚生労働省のウェブサイトから利用したい助成金を選択します。
2.実施計画の申請
応募する助成金を決めたら、その助成金の支給要件に即した実施計画を策定します。
3.実施計画の実行
実施計画を実行します。
4.支給申請
助成金の支給を申請します。
5.支給
支給要件をクリアしていれば、助成金が支給されます。
起業資金として「補助金・助成金」を検討する注意点
入金は後になるので、ほかの資金調達は必要不可欠になる
ここが一番大きなポイントです。
前述した「補助金・助成金」の支給までの流れを見てもわかるとおりで
- 「補助金・助成金」の申込
- 「補助金・助成金」を実行
- 「補助金・助成金」の実行内容を検査
- 「補助金・助成金」の支払い
という順番になります。
- 「補助金・助成金」を実行
というのは、年単位の実行です。
つまり、
「補助金・助成金」が無事支給されるとしても、1年後
ということになるのです。
例えば
会社の運転資金:500万円/年
必要な場合
自己資金:200万円
補助金:300万円
で資金調達しよう!
と思っても、これでは資金繰りがおいつかず、資金がショートしてしまいます。
正しくは
会社の運転資金:500万円/年
必要な場合
自己資金:200万円
日本政策金融公庫:300万円
で資金調達して、1年後に
補助金:300万円の入金 → 日本政策金融公庫:300万円返済
「借入なし」の状態になる
ということなのです。
ことを意味します。
「補助金」は、何に使っても良いわけではない!
「補助金」は、交付申請書の提出時に「経費明細書」を提出します。
例えば、省エネを促進するための補助金で、省エネの太陽光発電システムを購入するという計画で、採択されたのに、それを実行していないのであれば、補助金が下りないのは当然なのです。
助成金は、そもそも給付額が高額でないこと、厚生労働省の提供してくれるお金ですので、基本は「採用」「労働環境の整備」に使うお金です。
その助成金の要件をクリアしているのであれば、資金使途は問われないのです。
ただし、厚生労働省の助成金というのは、企業が納付する社会保険料が財源ですので
- 社会保険に加入していること
- 雇入れの前後6か月間に事業主都合による解雇をしていないこと
- 2年間を超えて労働保険料を滞納していないこと
- 過去3年間に助成金の不正受給をしていない、しようとしていないこと
などが利用条件になります。
起業時に「補助金・助成金」は利用すべきか?否か?
この回答をする前のおさらいとして
- 「補助金・助成金」は返済不要の資金
- 「補助金・助成金」支払われるのは1年後
- 「補助金・助成金」が支払われるまでは別の資金調達が必要になる
という問題があります。
回答としては
- 十分な資金調達ができるのであれば、利用すべき
- 十分な資金調達ができないのであれば、利用すべきではない
ということになります。
なぜ、そう考えるのかというと・・・
大前提として
というのは間違えありません。
しかし、「補助金・助成金」は、ご自身でもできますが、自分でやるのは非常に大変です。
複雑な申請書類の読み込み、作成、申請作業・・・
手間がかかって仕方がないのです。
だとすれば、資金調達コンサルタントや社労士などに依頼して、全部お任せでやってもらうのがベストなのです。
起業時こそ、社長がプライベートの時間もなげうって、ビジネスの構築を急がなければならないのですから、そんなことに時間をかけている暇はないのです。
しかし、資金調達コンサルタントや社労士に依頼するとなると、着手時に費用が発生します。資金調達コンサルタントや社労士の費用というのは、受給できる「補助金・助成金」の1割~2割程度(30万円前後)ですから、それで損をすることはありませんが、「先出し」のお金になってしまうのです。
この専門家に依頼する先出しの費用が負担となるのであれば
→ 「補助金・助成金」は利用すべきではない
(余裕ができた1年後、2年後でも遅くはない)
この専門家に依頼する先出しの費用が負担とならないのであれば
→ 「補助金・助成金」を利用すべき
(ただし、ほぼ丸投げで経営者はビジネスの立ち上げに注力すべき)
と考えます。
まとめ
「補助金・助成金」とは
- 国や地方公共団体が「政策を推進する」ために政策目的に即した事業に提供するお金のこと
補助金とは
経済産業省が提供する返済不要の資金のこと
- コンペで応募した企業の中から選ばれる ≒ 申込んでも通らない可能性が高い
数が多い - 給付金額が数億円のものもあり、高額
助成金とは
厚生労働省が提供する返済不要の資金のこと
- 条件をクリアすれば利用できる
- 給付金額が百万円程度と少額
起業時に「補助金・助成金」を利用するポイント
- 返済不要の資金であることは魅力的
- 支払われるのは1年後
- 支払われるまでの間は別の資金調達方法で資金調達する必要がある
- 起業時こそ、経営者の時間をとられないために専門家に丸投げする必要がある
起業するときの「補助金・助成金」の使い方というのは、非常に悩ましいものですが、返済不要の資金であるので、使えるもの(現在の事業内容を大きく変えずに取得できるもの)があるのであれば、トライして損はないものです。
起業時こそ、経営者の時間を十分に確保してビジネスモデルの確立に全力を注ぐべきです。ということは、『「補助金・助成金」は専門家に丸投げして、取得を目指すもの』と考えた方が良いでしょう。ただし、専門家に依頼すると先出のコストが必要になるので、それが「経営上負担にならないのであれば利用した方がよい」「負担になるのであれば、利用するのは1年後、2年後」と考えましょう。
起業した直後でももらえるの?