「起業したい」と考えている方は、起業による未来のイメージに期待を膨らませると同時に起業で失敗することへの不安を感じているのではないでしょうか。起業して4期目の私が実体験で感じた「起業のメリットデメリット」を解説します。
※起業本にあるような当たり前のメリットデメリットは外します。
目次
執筆時点の私の会社経営状況
- 会社設立:2013年10月
- 事業歴:3年半
- 運営会社:2社
- 社員数:3名(私含む)
- 年商:3億円
実体験で感じた「起業のメリット」
1.誰かに命令されないことの「開放感」はスゴイ!
- 一般社員 ← 課長の指示に従う
- 課長 ← 部長の指示に従う
- 部長 ← 執行役員の指示に従う
- 執行役員 ← 専務の指示に従う
- 専務 ← 社長の指示に従う
- 社長 ← 株主の指示に従う
役職が上がるにつれて、任せれる仕事の範囲、裁量が広がっていくものですが、それでも大きな方針としては上司の指示に従う必要があります。
実際は社長でも同じように株主の意向に従わなければなりません。組織の中では社長も、歯車のひとつであり、役員の意向を汲んで経営しなければ社長という役職を外されるリスクもあるのです。
結局、100%自身の裁量で仕事ができるのは「100%株主兼社長のオーナー社長のみ」なのです。
会社の規模が大きくなればなるほど、社長個人が100%の持ち株比率で株を保有することは難しく、上場する場合には株は手放す必要があります。
私の場合は、会社員の時代「YESマン」を心がけて、出世をしてきました。
社長の「これやってみようか?」
という提案に対しては、どんなに反対でも
「いいですね。やってみましょう。」
と言っていたと思います。
(うまく、いかなさそうなプランであっても、否定して社長に嫌われるよりは、やってみてダメだったら、自分のノウハウになるし、何のデメリットもない。
まったく売上につながらそうなプランで自分の部署の売上に大きなマイナスの影響があり、今後の自信の価値を下げると判断したときは、やるふりをして、ほとんどやらないような対応をすればよい。)
と思っていました。
「思っていることとやっていることが違う。」のは普通だろうと思って仕事をしていたのです。
同じような考え方で会社員をしている方も少なくないと思います。
しかし、起業をして強く感じるのは
- 上手くいかないと思うことはやらない
- 上手くいくと思うことをやる
という、極めて当たり前の行動が、とても開放感があり、充実感を感じるのです。
この時点でやっと気づいたのは「反対意見を抱えながら、意にそぐわない仕事をしていたことは自分にとって大きなストレスだったんだ。」ということです。
これは非常に楽しいことなのです。
例えるならば
ゲームをしていて、十字キーは他人が操作し、ボタンは自分が操作して、全然上手くゲームが進められず、イライラしているような状態から、すべてのコントローラ-を自分で使えるようになって、ゲームにのめり込むような感覚です。
当然、
上手くいくと思って、自分の判断で実行しても、失敗する
という経験は数多くあるのですが、それも含めて素直に受け入れることができます。100%自分のジャッジメントで動いたのですから、全責任は自分にあり、言い訳する相手もいないのです。
愚痴を言う必要もなく、失敗を素直に受け入れられるので、その分成長につながる気がします。
2.パチンコや競馬、麻雀、どんなギャンブルよりも「楽しさ」がある。
ギャンブルと比べるのは語弊があるかも知れませんが・・・
- 競馬で万馬券を当てても、10万円、100万円
- パチンコでどんなに勝てる人でも、1日10万円
- 麻雀なら、1日10万円
が関の山です。稼げるスーパーギャンブラーでも、年間1億円は厳しいのではないでしょうか。
全然、みみっちいのです。
- 孫正義さんの資産額は2兆円を超えています。
- 配当を含めた年収は100億円以上です。
ちなみに私の場合も
- 創業時の資本金は100万円
ですが
- 3年で年収は1億を超えました。
100倍です。しかも、年収ですから、毎年です。
今後も伸びる可能性があります。
どんなギャンブルよりも、払い戻し率が高く、自分の努力次第で結果を変えられるのです。
会社員の時代は何気なく行っていた営業メールも、
「この1通が1億円になるかもしれない。」と思って、真剣に考えて送るのですから、馬券を買う時のようなワクワク感があります。
それが商談につながる一つの成功でも、馬券が当たった時のような高揚感を得ることができるのです。
お金が儲かることがメリットというのではありません。
- 自分の資産が何倍にも増えるかも知れないと思って、日常の一つ一つの業務をすること
が
- 仕事だから仕方ないと思って、日常の一つ一つの業務をすること
よりも、抜群に楽しいということです。
起業して最も良かったと思うのは、1日1日の仕事の楽しみが得られたことです。
日本人はとくに人生の大半を仕事に費やすのですから、楽しい方が良いに決まっています。
3.とにかく自由
シンプルなメリットですが「自由」です。
- 服装も自由
- 就業時間も自由
- 働く場所も自由
- 休日も自由
- 残業時間も自由
・・・
なんでも、自由です。
私の場合は、Jリーグの鹿島アントラーズの大ファンですが
今までは仕事があると、試合は見れませんでした。
(こっそり、携帯で見ていたこともありますが、集中できません。)
今は全試合見ることができます。
日本代表の試合も含めて、サッカーは全部網羅するぐらい時間を調整しています。
スーツ大っ嫌いでしたが、今はスーツも来ません。1着しか持っていないですね。
クライアントとの商談で必要だと感じたときにのみ「スーツ」を着るだけです。
実体験で感じた「起業のデメリット」
1.強迫観念があって、成功しても思った以上に遊べない!!
私の場合は、十分に資金もできました。
サラリーマンの生涯年収は超えましたし
不動産もいくつか持ったので安定収入もあります。
ここまで聞くと、友人や元同僚は
「毎週末、海外旅行に行っているのでは?」
「毎晩、飲み歩いているのでは?」
「モテモテでしょ?」
・・・
と言ってくるのですが、
全然そんなことはありません。
なぜなら、経営者だからです。
たった、3年の経営経験ですが・・・
油断すると急激に売上が減る
という経験を何度かしてきました。
調子に乗って努力を怠った瞬間に「まさかの自体が発生する」のです。
これがトラウマになってしまっていて
- 長い休みを取る
- 遊びまくる
ということが「売上減に大きな影響を与えてしまうのでは?」という強迫観念があり、上手く遊びまくることができないのです。
これは私だけかもしれませんが、TVにでて豪遊してそうな経営者の方々も、演出の度合いが強く、実際はほとんど仕事に力を入れているように見えます。
起業前に想像していたほど、上手くいったからと言って「遊びまくれるものではない」のです。
2.強烈に孤独
経営者は、とにかく孤独です。
会社員の時代は
- 部下
- 同僚
- 上司
とともに仕事をするのですから
仕事の愚痴を言い合ったり、
成功したときは喜びを共有したり、
失敗したときは慰め合ったり、
仕事をしながらも、ワイワイ仕事ができる側面はあったかと思います。
しかし、こと経営者となると
- 仕事の愚痴を社員と言い合うことはできず
- 全責任は自分にあり
- 相談相手のいない中で
- 頼る相手のいない中で
- 自分一人で経営計画を立てる、経営を見直す
のが一般的です。
「一緒に共同経営すれば回避できるのでは?」と思う方もいるかも知れませんが、複数で起業する選択肢はあまりおすすめできません。
その理由はこちらです。
「経営者って、なんてさみしい生き物なんだ。」というのが実際に体験してみた感想です。
- 頼る相手がいない
- 相談する相手がいない
- 自分で決めなければならない
のです。
取引先や経営者仲間も、結局は仕事ですから、互いのビジネスの話が前提にあります。
- 取引先と飲めば接待になるし
- 同業の経営者仲間と飲めばどこかで相手の手の内を探り合ってしまいますし
- 他業種の経営者仲間と飲んでも、仕事の話で「○○の紹介をしてくれない?」という話になりがちです。
経営者が孤独感を回避できるのは、家族や学生時代の友人ぐらいなのです。
これは起業前には想定していなかったデメリットでした。
3.借金というリスク
起業をするにあたって、自己資金で起業する方も多いと思います。
しかし、会社が大きくなればなるほど
借金をする必要性
がどこかのフェーズで出てきます。
社長一人で起業して、会社が上手くまわる状態になれば、事業拡大も視野に入ってきます。
事業を拡大するためには
- 人材雇用
- オフィスの拡充
- 設備投資
- 仕入れの拡大
・・・
色々なコストが発生します。
結局、どこかで借金をしなければならないフェーズが出てくるのです。
ちなみに経済産業省の「設立年数別にみた無借金企業の割合」を見ると
「設立年数別にみた無借金企業の割合」
設立年数 | 割合 |
---|---|
10年以下 | 59.2% |
11年以上~20年以下 | 53.3% |
21年以上~30年以下 | 44.5% |
31年以上~40年以下 | 33.9% |
41年以上~50年以下 | 28.1% |
51年以上 | 21.7% |
出典:経済産業省「平成26年企業活動基本調査」
10年以下だと59.2%ですが、51年以上だと21.7%まで下がります。
日本の場合、法人が融資を受ける(借金をする)ときには、経営者個人が連帯保証人になる必要があります。
簡単に言えば
「会社が借金を返済できない場合は、社長個人が代わりに返済しなければいけませんよ。」
ということです。
会社が倒産して、借金が返済できなければ社長の財産を売却して返済に充てる必要があります。
マイホームも、車も、売却されて借金のみが残る
ことになってしまうのです。
米国では法人の借金は法人だけが背負うものであり、会社が倒産すれば経営者個人まで責任は問われないと言われていますが、中小企業の場合はそうでもないようです。
結局、中小企業の借金のリスクは、経営者個人にそのままのっかってくるのです。
これが最大のリスクと言っていいでしょう。
それほど深刻に考えていません。
自己破産して、借金も、財産も、ゼロの状態になったとしても、一度ビジネスを立ち上げて成功したスキルやノウハウ、経験がありますから「もう一回やればいいや。」と思っています。
会社を倒産させた経営者が自己破産をしてから、再度起業し成功した事例は、枚挙のいとまがないほど多くあるのです。
2回目の方が起業の成功率も格段に上がるはずです。
4.人間性が悪くなる!?
これは私だけかもしれませんが・・・
「人間性は会社員時代よりも悪くなっているなぁ。」と感じます。
これはなぜかというと・・・
会社員の時代に仕事を成立させるためには「社内営業」が欠かせませんでした。
- 周囲に配慮し
- 関係性を構築し
- 周りが嫌がることを率先してやり
- 部下の提案も聞き入れて
- 上司への愚痴なども共有し
人間関係を構築しなければ、組織で仕事はできないからです。
多かれ少なかれ、誰でもそうしているはずです。
しかし、経営者は全くベクトルが異なります。
- 意にそぐわないことはやらない
- 利益にならないことは片っ端から断る
- 周囲に配慮するよりも、自分の我を通して差別化をする必要がある
- 部下の意見もほとんど聞かない
シンプルに「嫌な奴」です。
例えば
取引先の担当者に少し対応が悪いやつがいても、会社員の時代であれば「まぁ、そういう人もいるよね。」と笑い話のネタで済んでいたものが
経営者の感覚では、担当者の対応が悪くて、無駄な作業が発生したり、売上が減る可能性があるのであれば、即刻、相手の上司に「担当を変えてくれ。」と言うべきだと考えるはずです。
緊迫感が違うのです。
今でこそ、わかりますが、成功している会社のオーナー社長にワンマンで威張り散らしている「嫌な奴」が多いのは必然なんだなと思っています。
自分も、いつの間にかそうなってしまっています。
しかし、振り返ってみると過去に働いていた会社の社長を思い出しても「人望に厚い社長の会社は利益がない、傾いている」「傲慢でワンマンな社長の会社は増収増益」という状態だったような気がします。
仕方ない部分があるとは言え、これも大きなデメリットではないでしょうか。
まとめ
実際に起業してから3年半会社を経営して感じたメリットとデメリットは
メリット
- 誰にも命令されない開放感
- 儲かる可能性を想像して仕事ができるから楽しい
- すべてが自由
デメリット
- 思ったより成功しても遊べない
- 孤独感が強い
- 莫大な借金を負うリスクがある
- 嫌な奴になってしまう可能性がある
というものがあります。
すべての起業する方に当てはまるものではないかもしれませんが、起業したい、これから起業するという方には参考にしていただければと思います。