情報が簡単に入手できるようになり、企業への期待も希薄化してしまっていることから、学生起業を検討する方も増えてきているようです。しかし、実際問題は学生起業の9割以上は失敗してしまうのが現実です。今回は、自身の経験も踏まえて「学生が起業で失敗しないための心得」について解説します。
目次
心得その1.学生でもビジネススキルが必要
という方も多いと思います。
学生起業の成功例として知られている
- 孫正義も
- スティーブ・ジョブスも
その時点でビジネススキルが十分に身につけられていたかは不明です。
しかし、孫正義は起業する際に
学生時代に
- シャープに自動翻訳機を売り込んで1億円を得る
- 米国でソフトウェア開発会社の「Unison World」を設立
卒業後に
- コンピュータ卸売事業の「ユニソン・ワールド」「日本ソフトバンク」を設立
しているのです。
スティーブ・ジョブスは学生起業ではありません。
- 1974年2月 アメリカ合衆国のビデオゲーム会社「アタリ」に就職
- 1976年6月 Apple Iを666.66ドルで販売開始
ですから、短期間とは言え、会社で働いた経験があるのです。
学生で起業したいと考えているのであれば
「習うより慣れよ」
というのは事実でしょうが
最低限のビジネススキルを身につけるために
「会社のビジネスに携われるようなポジションでアルバイトなどの経験を積む」
「起業直後の会社にインターン的に働かしてもらう」
「学生起業はせず、少なくとも1年~2年の社会人経験後起業する」
というような選択肢を取るべきなのです。
心得その2.仲間と一緒に起業しない
学生起業をする方に多いのは「友達数人で起業する」という選択肢です。
ということから、仲間を誘って一緒に起業する方が多いように感じます。
これは大きな失敗のもとです。
「絶対に起業したい。」と強く思って学生生活を送ってきて
「お前の起業のVISONは絶対に間違えがない。」という信頼があって
「資金面での不安などない。」という決意がある
人が、友達にいる可能性というのは、ほとんどないのです。
「みんなで渡れば怖くない。」
というのは、学生起業を失敗させる大きな要因です。
1年、2年うまくいかないだけで
「全然、計画通りにいかないじゃん。」
「こいつのいうこと間違っているのでは!?」
・・・
と、せっかく築いた友人関係も崩壊してしまいますし、途中でチームが瓦解してしまう可能性が非常に高いのです。
友達と一緒に起業するのはただの甘えなのです。
これは学生起業に限った話ではありません、社会人になってからの起業でも、
と、一人で起業する人の成功率の方が何倍も高いのです。
人間ですから、パートナーがいれば心強いのですが
- 責任転化
- 役割分担が不明確
- ビジネスに対する方針の違いから、妥協案が採用される
- 勝手に序列ができてしまう
・・・
上手くいかない要素が多すぎるのです。
「一緒に起業することはしない方が良い」のです。
文化祭のノリでうまくいくものではないと理解する必要があります。
心得その3.起業前に撤退ラインを決めよう!
学生起業の最大のメリットは
という点です。
といいたくなる気持ちもわかりますが・・・
考えるべきです。
筆者も起業したのは33歳ですが「2年間(24か月)で月100万円の利益が上げられるようにならなければ、起業を辞めて再就職する」というデットラインを決めて起業しました。
投資の世界でも、重要なのはうまくいかなかったときの「損切り」です。
だらだら、失敗した状態を引きずることの方が大きな問題なのです。
学生であれば、22歳で卒業して2年間起業のチャレンジをして失敗しても、24歳です。
起業から得られる経験というのは得難い経験であることも事実ですし、大手企業も、「それだけのガッツのある人間を採用したい。」と考えてくれます。
学生起業状態を、だらだら5年、10年と引っ張ってしまうと「社会人経験がない使えない人材」ということになってしまいます。
心得その4.学生起業で成功したメンター(師匠)を探せ!
学生起業する際に必要になるのは
「大企業で働いている人」でもなく
「起業経験者」でもなく
「大金持ち」でもありません。
「学生起業で成功した起業家」の知り合いが必要なのです。
「学生起業」と「社会人経験を得てからの起業」では、大きな違いがあるものですから、「学生起業」を成功させるために「学生起業で成功した人」からアドバイスをもらうのが一番有効な方法なのです。
とくに気をつけなければならないのは
心得その5.すべてのことはお金を遣わずに自分で実行する
学生に限ったことではありませんが・・・
会社を興すということは
- 営業
- 人事
- 広告宣伝
- 経理
- 総務
- 商品開発
・・・
という会社の機能を自分で用意しなければならないということです。
このときに
- 営業 → 営業代行会社、販売代理店
- 人事 → 人材紹介会社、転職サイト
- 広告宣伝 → 広告代理店
- 経理 → 経理代行会社
・・・
など、会社の機能を成立させてくれるサービスが世の中にはたくさんあるのですが、当然、アウトソーシングすればコストが発生します。
最近では、クラウドソーシングも増えてきているので、安価でアウトソーシングをすることもできますが
すべて社長が自分でやる
ことをおすすめします。
なぜなら、
会社が多少でもうまく回って、人を採用しようという場合に
- あなたが営業のことを知らなかったら、面接でどうやって営業の能力を見極めるのでしょうか?
- あなたが営業のことを知らなかったら、どうやって採用した営業マンを管理するのでしょうか?
- あなたが広告のことを知らなかったら、面接でどうやって広告担当者の能力を見極めるのでしょうか?
- あなたが広告のことを知らなかったら、どうやって採用した広告担当を管理するのでしょうか?
・・・
人任せにすれば
となめられてしまうのがオチです。
自分でやらなければ
- ビジネスチャンスを発見できない
- 改善点が見えてこない
- 本当はどのくらいの作業やコストがかかるのか?理解できない
- 担当者の採用時に評価できない
- 担当者の仕事をマネージメントできない
というデメリットがあるのです。
心得その6.「学生」という立場を利用するな!
「学生」であることを売りにして「学生起業」をするかたも多いのが現状です。
学生起業だと
- 上場企業などは積極的に支援してくれたりします。
- 営業に行って、スキル不足でも、邪見にされることはほとんどないでしょう。
- 面白いアイデアであれば、TV局や新聞からの取材も来るはずです。
・・・
「学生起業」というのは、ある程度のパワーがある「肩書」でもあるのです。
しかし、ビジネスの世界では、導入する商品やサービスを比較する上で
- 学生起業した社長が提供した商品・サービスであるか?
- 社会人経験がある社長が提供した商品・サービスであるか?
が比較検討材料になることはありません。
実際に私も、学生起業した社長さん、学生起業した会社の社員から営業を受ける機会は5社以上あったかと思いますが・・・
「学生だから提案力が低くてもしょうがないな。」とか
「多少、失礼な言動があるけど、まあ1年前は学生だもんね。」とか
甘く見る点は多かったものの、商品やサービスを導入しようとは微塵も思いませんでした。
理由は
商品力が競合他社に対して劣っていたから
です。
この段階では「学生起業」という「肩書」は何の意味もなさないのです。
逆に言えば
ということです。
ただし、商品やサービスの導入には、その企業の「信頼性」も大きな判断材料となります。
まったく同じ商品性能、価格だったとして
- 10年以上の運営歴のある会社の商品
- 学生起業1年目の会社の商品
を比較したら、迷わず前者を採用します。学生起業の会社は1年の運営実績しかないため、顧客対応ノウハウが不足している、倒産するリスクも高いと考えるからです。
だとすれば
「学生起業と言えば、協力してくれる企業も多い」と甘えた考え方でビジネスをすすめてしまうと、全然上手くいかないのです。
「聞かれなければ学生起業とは言わない」ぐらいの同じ土俵で戦うことを心がけましょう。
心得その7.小さく成功させてから、広げる
資金がとくに不足している学生起業の段階で大きなビジネスの絵をかきすぎても失敗します。
夢を語ることが悪いことではありませんが・・・
- 小さな商圏
- 小さな市場
- 小さな商品
・・・
で成功してから
- 拡大する
のがビジネスを成功させるコツでもあります。
- 全国展開を視野に入れていたとしても、○○市で成功しないものが、全国で成功するわけはありません。
- はじめから、30商品を投入する必要はなく、1商品だけに力を注いで上手くいったら商品数を増やせば良いのです。
- 商品の販売ターゲットを「学生」とする場合も、「学生」と広く取るのではなく、23区内大学の4年生ぐらい小さく取ることで投入コストを抑えることもできます。
これは上場企業でも、同じことが行われています。
例えば、リクルートであっても、ホットペッパーを投入する際には○○市だけで展開して、収益が見込めると判断してから、全国展開したのです。
すべての商品・サービスはプロトタイプ、テストマーケティングが必要不可欠なのです。
心得その8.高く売ることがから逃げては行けない
起業してから、実績もないなかで商品やサービスを作ろうとすれば
と安易な発想に至るのは、よくあることです。
低価格戦略がとれるのはスケールメリットがある大企業だからです。
学生起業したての会社が同じ価格帯で勝負しようとしたら、絶対に勝てません。
だとすれば
ことを前提にビジネスを考える必要があるのです。
心得その9.独自性しか武器にならない
競合他社の真似をすることで勝つためには
- 人
- モノ
- カネ
- 情報
で競合他社を超えなければなりません。
これは、学生起業後の会社では無理なのです。
億単位で資金調達したとしても、シェア1位の競合他社と張り合えるはずがありません。
これを解決するためには
- ニッチな市場で戦うか?
- 誰もいないブルーオ―ションで戦うか?
しかありません。
学生起業ほど「独自性」「他社との違い」が重要になってくるのです。
これをベースに事業を進めていくべきです。
心得その10.再起不能にならない失敗を積み重ねよう!
失敗することでしか、経験は得られまん。
どんどん失敗すべき
なのです。
しかし、再起不能になるような失敗は必要ありません。
何億円という借金を負って失敗したら、借金返済までに数十年の時間を無駄にしてしまいます。
学生なのですから、資金を使わずに工夫して起業して、失敗したとしても、「笑い話」になるぐらいのデメリットしかありません。
- かっこいいオフィス
- はじめからスタッフが何人もいる状況
- 立派なウェブサイトやパンフレット
- デザイン性の高い名刺
・・・
全部不要です。
ネットが進化しているため、
- 実家で起業
- 打ち合わせはマック
- 友人にお手伝いを依頼するだけ
- LINEとfacebookと友人をフル活用
・・・
で、稼ぐことも簡単にできる時代なのです。
まとめ
学生が起業で失敗しないための心得10選
- 心得その1.学生でもビジネススキルが必要
- 心得その2.仲間と一緒に起業しない
- 心得その3.起業前に撤退ラインを決めよう!
- 心得その4.学生起業で成功したメンター(師匠)を探せ!
- 心得その5.すべてのことはお金を遣わずに自分で実行する
- 心得その6.「学生」という立場を利用するな!
- 心得その7.小さく成功させてから、広げる
- 心得その8.高く売ることがから逃げては行けない
- 心得その9.独自性しか武器にならない
- 心得その10.再起不能にならない失敗を積み重ねよう!
学生起業自体は決して悪いことではありません。
しかし、ビジネススキルが備わっていないと成功しないのも事実です。
「学生起業」は、周囲の大人や友人からチヤホヤされて勘違いしてしまう経営者も少なくありません。
商品やサービスの購入を選択するときに顧客にとっては「学生起業であることのアドバンテージはないこと」を理解する必要があります。
「起業」「経営」は、華やかなイメージのものではなく、泥臭いものですので、周りに惑わされずにひたむきに取り組むことが重要です。
「学生が起業で成功するコツとは?」
・・・