こんな相談を受けることがあります。実際に、筆者が体験した、週末起業とその効果について解説します。
目次
筆者の週末起業の体験
筆者は、インターネットの広告代理店に3年ほど勤務していました。
役職は「営業部長」です。当時の年齢は32歳です。
ある程度の役職を任されている分、当然やりがいはありますが、同時に「自分の会社を作って、成功させる」という野望もありました。
ただし、性格が「小心者」がゆえに
という恐怖から、本来は20代後半で起業するチャンスはあったものの、ずるずるとサラリーマンをやり続けていたのです。
サラリーマンでいる間は、仕事は大変ですが、やりがいもありますし、部下も、勤務先の社長も、それなりに信用してくれて、居心地の良い職場と言えました。
そこで考えたのが
です。
当時は、それが大きな落とし穴であることに気づくこともなく、「画期的なアイディアだ」と思って、実行しました。
週末起業で取った行動
私の場合
いったん、プライベートの時間はゼロにすることを決断しました。
- 平日:帰社後 1時間~2時間
- 週末:土曜日/日曜日:8時間
ですから、時間にして
月100時間ほど、週末起業の時間を取ることにしました。
メディア事業ですから
- ウェブサイトを作る
- ウェブサイトをコンテンツを作る
- ウェブサイトを運用する
- 集客する
- 広告主に営業する
・・・
まぁ、やっていることは、インターネットの広告代理店として働くこととそれほど大差はないので、問題なく運用できました。
と思って、1年継続しました。
どうなったかというと・・・
1年続けた結果どうなったのか?
月2万円の売上
です。
自分でいうのもはばかられますが、「営業部長」の役職があるぐらいですから、
- それなりに仕事ができる自負があり
- それなりにインターネットに対する知識があり
- それなりにメディア運営のノウハウがある
と思っていた、自分が月100時間かけて、売上2万円です。
時給200円ですから、バイト以上に生産性の低い結果となってしまいました。
最初に答え合わせをしてしまうと
今は、会社を設立して、5期目になり、年商も3億を超えています。
だからこそ、わかる自分が週末起業で犯した失敗を解説していきます。
なぜ、週末起業で結果がでなかったのか?
それなりにビジネスに対する自信がある私が、時給200円の生産性しか週末起業であげられなかった理由はどこにあるのでしょうか?
自分なりに考えた結果は、下記です。
週末起業失敗の理由
その1.そうは言っても、安定して時間が取れなかった。
計画時には、月100時間のリソース投入を考えていました。
しかし、実際に仕事をしていると
- 顧客からのクレーム
- 接待
- 新規事業の立て付け
- 部下とのコミュニケーションでの飲み
・・・
その2.頭がこんがらがってくる
サラリーマンとして、会社から給料をもらっているのですから、週末起業をするといっても、会社の仕事に手を抜くことは全く考えていませんでした。
考えることが
- 勤務先の会社の売上
- 自分の部署の売上
- 自分の部下のモチベーションコントロール
- 社長の突発的な命令に対する対応
- 社内調整
- 営業マンの採用
- 顧客のクレーム対応
- 顧客の開拓方法の検討
・・・
と、ありすぎるんです。
これとは別に自分の週末起業のビジネスに対して、頭を使わなければならないのですが・・・
フルパワーで勤務先の仕事に取り組んでしまうと
時間的には帰社してから、1時間~2時間使えるはずなのですが・・・
脳みその中身は、エネルギーゼロの状態
になり、思考能力がほとんど失われた状態で自分のビジネスに取り組まなければならなくなってしまうのです。
これでは上手くいくはずもありません。
その3.できることが限られてしまう
営業活動ができない
勤務しているインターネット広告代理店の顧客に対して営業してしまうと、副業がばれてしまいますし、顧客にも迷惑をかけてしまいます。会社のお客さんを横取りすることになるので、仁義に反する行為ですから、私にはできませんでした。
外注先を使えない
活動するのは土日か、平日の夜遅くですから、ほとんどの会社は休みなのです。営業もできませんし、デザイナーやライター、制作会社なども休んでいることが多いのです。
採用ができない
当たり前ですが、法人ではないので採用もできません。
・・・
今だからわかる、週末起業の最大の問題点
ビジネスで利益を出すために一番必要なことは
敵に勝つ
ということだと、現在の私は考えております。
のことです。
敵がいないビジネスであれば、競合他社を意識する必要はありませんが、ほとんどのビジネスでは、競合他社がいるのです。
これが5年会社経営をしてわかった真実です。
経営本を読めば、競合に勝つことが重要なことぐらいどこにでも書いてあるのですが、実際に経営をしてみると「これが最大に重要なことだ。」ということがわかるのです。
メディア事業にも競合他社はたくさんいます。
大手企業でいえば
- リクルート
- 価格.com
- オールアバウト
もメディア事業です。
大手企業だけでなく、社員数10名程度の中小企業であっても、
1つのウェブサイトの制作・運用に3名体制ぐらいは取っています。
- 月200時間の正社員 × 3名 = 600時間
- 脳エネルギーすかすかの状態の私 1名 = 100時間
よーいどんで競争したとしても「差は広がる一方」で「まったく追いつけない」のです。
「週末起業では、勝てるはずはない」
ということが、今にしてみるとわかるのです。
当然、下記のような反論もあるかと思います。
「敵が少ないニッチな分野であれば叩けるはず。」
私もそう思っていたのですが、
知能レベルが凡人の私の場合は、そうはいかなかったのです。
その理由を考えてみると
- ビジネスにかける時間(のべ人数)が大きければ大きいほど、いろいろなチャレンジができる
- いろいろなチャレンジができれば、失敗体験と成功体験が増える
- 失敗体験と成功体験が多ければ多いほど、精度の高いビジネスモデルが構築できる
のです。
- 経営スキルが不足していた。
- 市場の設定がまずかった。
という問題はあるかもしれませんが
運動神経がいくら良くても、10年サッカーを経験している経験者に、サッカー経験数か月の方がフットサルを挑んでも、太刀打ちできないのです。
週末起業失敗からサラリーマン起業へ
と聞かれることも多いのですが・・・
シンプルに言えば
です。
全力を尽くして失敗したのであれば、「あなたは会社経営者の器ではない。」とあきらめがつきますが、前述した通りで、時間もかけられない、脳みそのエネルギーがすっかすかの状態で取り組んでいたのですから、全くやり切った感がなく失敗したのです。
そこで私が考えたのは
です。
週末起業をして良かったことは「吹っ切れた」ことです。
- 週末起業では埒が開かない
- 夢をあきらめたくはない
- 決断せずに並行し続ければ、勤務先にも、迷惑がかかる
ということから、サラリーマンを辞めて、起業することを決断しました。
ただし、「小心者」の性格は変わってしません。
そこで、自分なりのルールを設定しました。
- 辞めるまでに500万円貯める
- 500万円貯めて、100万円で起業する
- 残りの400万円は、2年分の生活費
- 2年間で結果がでなかったら、サラリーマンに戻る
というルールです。
と思ってからは、気楽に起業の準備に入ることができました。
今だからわかる、サラリーマン起業の前にしておくべき起業の準備とは?
貯金をして、デッドラインを設定する
私が、週末起業という逃げ腰なジャッジをしてしまった理由は「不安」からくるものです。
というネガティブなイメージを払しょくしきれなかったから、「サラリーマンも続けて、あわよくば起業したい」と思い、週末起業を決断してしまったのです。
ある程度の貯金(私の場合は、100万円の資本金と2年分の生活費)があれば、割り切って「ダメだったらサラリーマンに戻れば良い。」という判断ができます。
逃げ道がしっかり用意できれば、小心者でも、決断はしやすくなるはずです。
生活費(ランニングコスト)を落とす
のです。
サラリーマンの場合は、毎月数十万円の給料があるのですから、そのうちの70%~80%は支出に回しても、貯金が増えていく状態なので問題ありません。
私も
- 中目黒に住み
- 高級レストランで食事をし
- 朝は、タクシー通勤
ですから、十分に高いランニングコストを支払っていました。
しかし、起業したタイミングで
- 1日1500円までの食費
- 賃貸から実家に戻る
に切り詰めて、学生並みの生活に戻しました。
起業後のビジネスの競合他社の情報収集をする
- サラリーマン時代
- 起業後
で大きく違うのは「信用」の問題です。
起業後の会社経営に役立つ生きた情報を集めようとすれば、広告代理店時代なら、クライアントにヒアリングすれば良かったのですが
起業後は
- 大手企業は相手にしてくれない
- 同業他社になってしまうと警戒されて情報をくれない
のです。
サラリーマン時代に、勤務先の会社の信用を借りて「生きた情報」を集める
ことが重要だと考えます。ネットに書いてある情報は、起業後でも集められますが、利益につながる有益な情報は、ネットにはないのです。
- サラリーマン時代:広告代理店
- 起業後:広告代理店
だとすると
サラリーマン時代の広告代理店のクライアントは、その会社以外の広告代理店とも付き合いがあるはずです。
- どの広告代理店のサービスが良いのか?
- 他の広告代理店を使っていて、良かった点
- 他の広告代理店を使っていて、頭にきた点
- 現在利用している弊社以外の広告代理店を選んだ理由
など、生の情報を入手しておけば、それが起業後の重要な「競合に勝つための情報」になるのです。
見込顧客の開拓、顧客開拓方法の検討をする
サラリーマン時代は起業していないのですから、販売できる商品やサービスがあるわけではありません。
そこですべきことは
起業後のお客さんになりうる方に接点を多く持っておく
ということです。
営業する必要はないので、接点があれば起業後にアプローチすることができます。
このときの見込顧客の開拓も、サラリーマン時代なら勤務先の信用を借りて、スムーズにできるのです。
得意分野以外のスキルに関して、同僚に教わる。そして仲良くなる
会社の経営者というのは、はじめは全部自分でやるしかありません。
私も
- 営業
- 企画
- 経営
- マーケティング
面では、自分でできると自負していましたが・・・
実際に経営をしてみると
- 経理/事務/確定申告/税務処理
- 採用/人事/給与計算
- システム開発/サイト制作
- デザイン
等、すべて自分でやらなければならなくなるのです。
必要になるたびに、書籍を読んでマスターするのですが、かなり時間がかかります。
サラリーマン時代に戻れるのであれば
と思います。
ですから
ある程度、自分でやることを想定して
起業する前に
- 同僚に教えてもらう
- 教えてもらったお礼などで食事に誘ったりして、関係値を深める
ことが重要になります。
当然、起業してみないと本当に必要な情報はわからないので、サラリーマン時代に教えてもらっても、すべてが解決するわけではありません。
しかし、仲良くなっておけば、起業後も教えてくれるはずです。
また、起業後に経営が良くなった後に社員として採用できる可能性も出てきます。
起業後の事業計画/プランBを練り上げる
サラリーマン時代にできる準備で重要なポイントは「事業計画の立案」です。
前述した通りで
- 競合他社の分析
- 見込顧客の開拓
- 同僚からのヒアリング
などを駆使して、精度の高い事業計画を作ることができます。
ここで考えておいてほしいポイントは
「プランB」を用意すること
です。
絶対に事業計画通りに進まない。
と言い切ってもいいぐらいです。
だとすると
事業計画を作りこむことも重要ですが・・・
- もし、顧客が集まらなかったらどうする?
- もし、商品が生産できなかったらどうする?
- もし、社員が採用できなかったらどうする?
不測の事態に備えて
項目ごとに
プランB、プランC、プランD・・・
と、うまくいかなかった場合の対応策の引き出しを多く用意しておくべきなのです。
あらかじめ、事業計画通りにいかない場合の対策があれば、そうなったとしても慌てずに意思決定できるはずです。
最後に重要なのは「決断」あるのみ
貯金をして、生活費を落としたら、ある程度、売上0円でも耐えられる期間が決まります。そこをデッドラインに設定すれば「決断」もある程度容易になります。
- デッドラインを設定し
その上で、
- 勤務先のクライアント
- 勤務先の同僚
との関係性を強固にして、情報収集をし、
- 事業計画
- プランB
を練り上げて、準備完了です。
後は「起業の決断あるのみ」です。
まとめ
週末起業が失敗した理由
- 競合他社と比較して投入リソースが著しく小さいため、勝てなかったこと
が最大の要因と言えます。
競合他社に勝てなければ、利益は生まれないのです。
競合他社に投入リソースで勝つためには「週末起業」では限界があるのです。
週末起業失敗からサラリーマン起業をしてわかった、サラリーマン時代に準備するポイントとしては
- 貯金をして、デッドラインを設定する
- 生活費(ランニングコスト)を落とす
- 起業後のビジネスの競合他社の情報収集をする
- 見込顧客の開拓、顧客開拓方法の検討をする
- 得意分野以外のスキルに関して、同僚に教わる
- 起業後の事業計画/プランBを練り上げる
そして、最後に決断です。